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表紙:なぜ日本の災害復興は進まないのか

家田修著『なぜ日本の災害復興は進まないのか~ハンガリー赤泥流出事故の復興政策に学ぶ』現代人文社刊、2014年9月、255頁、3132円(税込)

著者が専門とするハンガリーで2010年10月に赤泥流出事故が起きました。環境と人体に極めて有害な産業廃棄物質が、溜池の決壊によってハンガリー、ヴェスプレーム県の周辺市町村に流出し、いずれ国際河川のドナウ川に流れ込むことが危惧され、ヨーロッパでは大きく報道された事故です。著者は同事故発生当初から現地におもむき、以降も何度か被災地を訪れ、ハンガリー側の協力も得ながら継続的に同事故の調査を続けました。

ところが翌年の3月に日本で東日本大震災と福島第一原発事故が発生します。まったくの偶然なのですが、この大震災発生の知らせを著者は出張先のウクライナで知ったのです。祖国日本は壊滅かと恐れながら日本に帰国すると、とりわけ原発事故に関しては、欧米での報道と日本国内の報道のされかたが余りにも異なっていることにとまどいました。また市民から大学と社会、知識と実践について多くの質問を受け、以降、「一緒に考えましょう講座」を市民の皆さんと共に3年あまり続けております。

2012年11月に福島市で行われた飯舘村避難者支援のシンポジウムでハンガリー赤泥事故からの復興政策について報告したところ、聴衆から大きな反応がありました。またシンポジウムに出席しておられた現代人文社の成澤社長から、広く社会に問う書物の出版を勧めてていただきました。つまり、多額の負債を負うハンガリー国が、国内外から集まった過去最高の募金(これは日本も同様でしたが)を手掛かりとして、被災者の復興住宅をわずか一年で建設し終えたという事実があるのです。しかもそれは公営住宅や集合住宅を建てたのではなく、被災者の希望を取り入れ、個人所有の住宅を建設したもので、世界的にもそのような事例はありません。どうしてこのようなことが可能だったのか。その基本理念や手法や実践課程を本著にまとめました。

またハンガリーの復興例では事故前の旧情にすみやかに戻るのではなく(日本ではそれも果たされていませんが)、復興計画に将来の地域像を盛り込んでより発展的な地域再生が目指されました。

日本の震災復興は遅々として進んでおりません。とりわけ原発被災地は人類にとって、無論日本にとっても有史以来の手さぐり状態で復興を模索しています。この日本の復興の現状に対して、ハンガリーの復興策が何らかの示唆を与えるのではないか、少しでも日本の被災者の救済に役立つのではないか、こうした願いをこめつつ書き、このたび出版されたので、御報告いたします。

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